三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第三話

非通知

2026.08.09

毎晩九時ちょうどに非通知の着信がある。

最初の夜は無視した。二日目、好奇心に負けて出ると、相手は何も言わずに切った。ただ切れる寸前、受話口の向こうで小さく笑う声がした。聞き覚えのある笑い方だった。

三日目の夜、また九時に鳴った。出ると、今度は相手がしゃべった。

「明日、駅の階段で転ぶよ。右手をつくから、手首は軽い捻挫で済む」

僕の声だった。録音なんかじゃない。こちらが「誰だ」と聞くと、「わかってるくせに」と、僕の声のまま笑った。

翌日、僕は駅の階段で転んだ。とっさに右手をつき、手首を捻挫した。予告されていたのに、避けられなかった。足が滑った瞬間、体が勝手にそう動いたのだ。

それから毎晩、電話は翌日のことをひとつだけ教えてくる。会議で褒められること。財布を落としかけること。当たらなかったことは一度もない。

昨夜の電話はいつもと違った。僕の声は少し疲れているようだった。

「明日の夜は、電話に出ないで」

「どうして」

長い沈黙のあと、受話口の向こうで僕ではない誰かの声がした。

「……もうすぐ代わるから」