三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第六話

合鍵

2026.08.12

帰宅すると、部屋が少しだけ片付いている。

脱ぎ散らかしたはずの靴が揃えてある。流しに置いた茶碗が洗ってある。最初は記憶違いだと思った。次は、合鍵を渡している母を疑った。電話をすると、母は「もう半年行ってないわよ」と笑った。

その日から、チェーンをかけて眠るようにした。

効果はあったらしい。部屋はまた散らかるようになった。靴は脱いだまま、茶碗は流しに溜まったまま。だらしない生活が戻ってきたことに、心の底から安堵した。

ゆうべ、玄関で物音がした。

鍵穴に鍵が差し込まれ、回り、ドアが数センチ開いて、チェーンで止まる音。息を殺す私の耳に、隙間から、ため息がひとつ届いた。

「……チェーン、いつからするようになったの」

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