三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第八話

終バス

2026.08.12

残業帰り、いつもの終バスに飛び乗った。

乗客は私ひとり。いつものことだ。一番後ろの席に沈み込み、目を閉じる。バスは定刻どおりに走り、停留所に停まっては、誰も乗せずに扉を閉める。

それなのに、停まるたびに料金箱の音がした。

ちゃりん、ちゃりん、と小銭の落ちる音。うとうとしながら、両替でもしているのだろうと思った。三つ目の停留所で、ちゃりん。四つ目で、ちゃりん、ちゃりん。

薄目を開けると、車内は相変わらず私ひとりだった。ただ、天井の吊り革が、いくつか、ゆっくりと揺れていた。バスは直線を走っていた。

私の停留所に着いて、降車ボタンを押した。運転手は「お疲れさまです」と言い、それから、ルームミラー越しにこちらを見た。

「お客さん、お連れさんは。起こさなくていいの」

振り返った車内には、誰もいなかった。

「そう。じゃあ、いつもどおり車庫まで乗せていきますから」

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