三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第十一話

予約席

2026.08.13

通い始めて十年になる、古い喫茶店がある。

窓際の奥の席には、いつも「ご予約席」の札が立っている。十年間、その席に誰かが座っているのを見たことがない。あるときマスターに聞いてみた。

「ああ、あれね。昔の常連さんの席。もう二十年、いらしてないんだけど」

「二十年? それはもう、来ないんじゃ……」

「うん。でもね、ああしておかないと」

マスターはコーヒーを淹れながら、こともなげに言った。

「札を下げた月はね、決まって誰かが座ってるんだよ。誰も入ってきてないのに」

冗談だと笑って、私はいつもの席——入口近くのカウンターに戻った。

昨日、店に行くと、私のいつもの席に真新しい札が立っていた。「ご予約席」。マスターは私と目を合わせず、窓の外を見ながら言った。

「ごめんね。昨日から、そこ、座ってらっしゃるの」

「……誰が」

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