三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第十三話

内見

2026.08.13

駅近、築浅、家賃は相場の半分。何かあるに決まっていた。

それでも見るだけならと内見を頼んだ。案内してくれた営業マンは愛想がよく、日当たりだの収納だのを丁寧に説明してくれた。事故物件かと単刀直入に聞くと、彼はきっぱり首を振った。

「告知事項はございません。この部屋では何も起きていませんから」

妙な言い回しだったが、部屋は文句なしだった。ひとつ気になったのは彼が和室の押し入れだけ最後まで開けなかったことだ。指摘すると、彼は初めて笑顔を消した。

「開けられます。開けられますが……お客様が開けるのはご契約後にされたほうがいい」

「どうしてです」

「ご契約前ですと、まだ「よその方」なので。先方が、その、いい顔をなさらないんです」

冗談にしては目が笑っていなかった。俺は結局契約した。家賃には代えられない。

引っ越しの日、意を決して押し入れを開けた。中は空っぽで、拍子抜けするほど綺麗だった。ただ下の段の畳に、人が正座していたような凹みがふたつ並んでいた。

凹みは今も消えない。そして最近、ひとつ増えた。