三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第十四話

地下二階

2026.08.13

うちのマンションのエレベーターは、たまに変な階に停まる。

深夜に乗ると、誰も押していない「B2」のランプが点く。ボタン盤にB2などない。あるのは一階から八階までと、地下の駐車場「B1」だけだ。それなのに表示板の数字はB1を過ぎ、「B2」で停まる。

扉は、開かない。

十秒ほどの沈黙のあと、エレベーターは何事もなかったように上昇を始める。管理人に話すと、「このマンション、地下二階はありませんよ」と困った顔をされた。点検業者も異常なしだと言う。

住人の間では、ちょっとした怪談になっている。B2に停まっても、絶対に「開」のボタンを押してはいけない、と。誰が言い出したのかは知らない。皆、なんとなく守っている。

昨夜もB2に停まった。私は疲れていて、早く部屋に帰りたくて、苛立ちまぎれに閉のボタンを連打した。

扉の向こうから、ノックの音がした。

こん、こん。遠慮がちに、二回。それから、くぐもった声がした。

「——今日も、開けてくれないんですか」

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