三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第十七話

角部屋

2026.08.14

毎晩十一時になると、壁を叩く音がする。

とん、とん、とん、と三回。決まって三回。隣人の生活音にしては規則的すぎるが、苦情を言うほどでもない。二か月ほど我慢して、とうとう管理会社に電話した。

担当者は部屋番号を確認すると、少し黙り、それから言いにくそうに切り出した。

「あの……お隣の二〇五号室は、空室です。もう三年ほど」

「じゃあ反対側の」

「お客様のお部屋は角部屋です。壁の向こうは、外です」

言われて初めて、自分の部屋の間取りを思い浮かべた。そのとおりだった。音がするのは、ベッドの頭側の壁。その向こうは三階分の高さの、ただの空中だ。

担当者は電話口で、なだめるように続けた。

「前の入居者の方からも、同じお問い合わせがありました。その前の方からも。皆さん、気になさって退去されるんですが……あの、これは担当としてではなく、個人的な助言なんですけど」

「はい」

「叩き返さないでください。前の方は、それで」

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