三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第十八話

後続車

2026.08.14

深夜の峠道で、後ろにヘッドライトが付いた。

対向車もない山道だ。連れができたようでむしろ心強かった。だが十分走っても二十分走っても、ライトは同じ距離を保ってついてくる。こちらが速度を上げれば上がり、落とせば落ちる。

煽られているわけではない。ただぴったりと同じ距離。

気味が悪くなって退避帯に車を停めた。後続車も停まった。ライトを点けたまま、二十メートルほど後ろで。エンジン音は聞こえなかった。

五分待った。動かない。僕は意を決して車を降り、後ろに向かって声を張り上げた。

「何か用ですか!」

ライトがふっと消えた。

そこには何もなかった。車も人も。ガードレールと、その向こうの暗い谷があるだけだった。僕は震えながら運転席に戻り、山を下りた。バックミラーは二度と見なかった。

翌朝、明るいところで車を点検して、ようやく気づいた。

リアガラスに外側から、手のひらの跡がびっしりと付いていた。全部ガラスの上のほう——大人が立って届く高さより、ずっと上に。