かくれんぼ
2026.08.14
子どもの頃、いとこたちと実家でかくれんぼをした。
私の必勝の隠れ場所は仏間の押し入れだった。あの日も布団の隙間に潜り込んだ。暗がりに目が慣れてきたとき、すぐ横に誰かの背中があることに気づいた。
子どもの背中だと思った。いとこの誰かが先に隠れていたのだと。だから私は声をひそめて「つめて」と言い、その背中に寄り添って鬼が諦めるまでじっとしていた。背中はずっと冷たかった。
鬼だったいとこが襖を開けたとき、押し入れには私しかいなかった。
先週、法事で三十年ぶりに親戚が集まり、その話をした。笑い話のつもりだった。だがいとこたちは顔を見合わせ、誰も笑わなかった。年長のいとこがぽつりと言った。
「おまえも見たのか。……あの家のかくれんぼ、隠れた人数のほうがいつも一人多かったんだ。数えるたびに」
帰り際、仏間の前を通ると、うちの息子が押し入れに向かって話しかけていた。
「いーれーて」
襖の向こうから、小さく「いいよ」と聞こえた。