三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第二十三話

アラーム

2026.08.28

スマホに覚えのないアラームが増えていた。

午前三時三十三分。設定した記憶はない。ラベルは空欄だった。寝ぼけて作ったのだろうと削除して寝た。

翌朝また入っていた。三時三十三分。今度はラベルにひらがなで一文字。

「に」

削除しても翌朝には戻っている。ラベルは日ごとに増えた。「にげ」「にげて」。四日目、僕は消すのをやめて鳴らしてみることにした。何かの警告なら聞くべきだと思ったのだ。

三時三十三分、アラームが鳴った。

止めようと手を伸ばして気づいた。鳴っているのはスマホじゃない。音は部屋の隅から聞こえていた。クローゼットの中から僕のスマホと同じアラーム音がくぐもって鳴っていた。

スマホは枕元にある。画面は暗いままだ。

クローゼットの音はしばらく鳴ってぷつりと止まった。誰かが止めたように。それから衣装ケースの上あたりで、ことん、と音がした。僕は朝までスマホのライトを点けたまま壁を背にして座っていた。

朝、クローゼットを開けると奥から古いスマホが出てきた。僕のではない。前の住人の忘れ物だろうか。電源は入らなかった。充電器も繋がっていないそれの画面にアラームの通知が一件表示されたまま固まっていた。

「3:33 にげて」

僕はその日のうちに引っ越しを決めた。新居の夜は静かだ。ただゆうべ、スマホに覚えのないアラームがひとつ増えていた。午前三時三十四分。ラベルにはこうあった。「まにあった?」