三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第二十六話

バックアップ

2026.08.28

母が死んで四十九日が過ぎた頃だった。

スマホの写真アプリに「共有アルバムに新しい写真」と通知が来た。母と共有していたアルバムだ。生前、孫の写真を送り合うために作った。開くと新着が一枚あった。

母の家の仏間の写真だった。

僕が飾った遺影と、僕が供えた花が写っていた。つまり母が死んだあとの部屋だ。アングルは低く、座椅子のあたりから撮ったように見えた。母がいつも座っていた、あの場所から。

解約し忘れたスマホが誤作動したのだと思うことにした。母のスマホは仏壇の引き出しにしまってある。充電も切れているはずだ。

写真は月に一、二枚増え続けた。

庭の梅の写真。降り始めた雪の写真。どれも母の家の、母の目線の高さで撮られていた。まるで季節の便りのように。怖いというより、いっそ懐かしかった。僕は誰にも言わず、それを受け取り続けた。

先月の写真で初めて人が写った。

正月に集まった、僕たち家族だった。仏間で笑う僕と妻と娘。仏壇の中から撮ったような、低い低いアングルで。

それでも僕はアルバムを消さなかった。消せなかった。昨日また一枚増えた。写っていたのは、うちのマンションの玄関だった。

写真の下に初めてコメントが付いていた。「ちかくまできたので」。——母は筆まめな人だった。死んでからも、それは変わらないらしい。今夜は母の好きだった水羊羹を買って帰ろうと思う。玄関に、お供えとして。