三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第二十八話

みまもり

2026.08.28

小学生の娘に、みまもりGPSを持たせている。

ランドセルに入れる小さな端末で、スマホの地図に現在地が表示される。学校に着けば通知、家に着けば通知。共働きのわが家にはありがたい道具だ。

異変は夜中に起きた。

午前二時、スマホが鳴った。「学校を出ました」の通知だった。娘は隣の部屋で寝ている。見に行くと、ちゃんと布団にいた。ランドセルも部屋の隅にある。GPSの誤作動だと思った。

だが地図を開くと、娘の点は確かに動いていた。

学校を出て通学路を、家に向かって。歩く速さでまっすぐに。私は寝ている娘の横で、その点が近づいてくるのを見ていた。点は家の前まで来て一瞬止まり、ふっと消えた。同時に通知が鳴った。

「自宅に着きました」

翌朝、端末を調べたが異常はなかった。メーカーに問い合わせても「記録上、移動は確認できません」。あの夜の履歴だけ存在しないことになっていた。

同じことが、これまでに三回あった。決まって午前二時。決まって学校から家まで。

四回目の昨夜、私は思い切って玄関の外で待ってみた。地図の点が家の前に来る、その時刻に。

通りには誰もいなかった。ただ点が消える瞬間、うちの門の前で、ランドセルの金具が鳴るような、かちゃ、という音だけがした。それから小さな声で「ただいま」と聞こえた。娘の声ではなかった。

今朝、娘に何気なく聞いた。「学校で、誰かのGPS拾ったりしてない?」。娘はきょとんとして、それから言った。「拾ってないよ。でもね、前に一回、貸してあげたの。いっしょに帰りたいって言うから」——誰にとは、怖くてまだ聞けていない。