三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第三十話

歩数計

2026.08.28

スマホの歩数計を見るのが日課だ。

一日八千歩が目標で、達成できると小さく嬉しい。その夜も寝る前に確認した。八千二百歩。よし、と思って眠った。

朝、歩数計を開くと一万六千歩になっていた。

寝ている間に八千歩弱、増えている。グラフを見ると、深夜一時から四時にかけてコンスタントに歩いた記録があった。スマホは枕元に置いていた。夢遊病を疑って、翌晩は玄関に椅子でバリケードを作って寝た。

朝、バリケードは無事だった。歩数は九千歩増えていた。

スマホの故障だと思いたかった。だが機種変更しても深夜の歩数は記録され続けた。しかも少しずつ増えていく。一万歩。一万二千歩。まるで日ごとに遠くまで歩いているように。

先週、ヘルスケアアプリに新しい通知が来た。

「新記録です! 昨夜は22,340歩 歩きました」

添付された移動マップを震える指で開いた。深夜の私の「散歩コース」が赤い線で表示されていた。線は家を出て、まっすぐ北へ延びていた。川を越え、隣の市を抜け、山のほうへ。折り返し地点で線は小さな円を描いていた。何かの周りを、ぐるぐると回ったように。

地図を拡大した。円の中心にあったのは墓地だった。

見覚えがあった。三年前に死んだ祖母の眠る霊園だった。

今夜も歩数は増えるのだろう。私の体は布団にあるのに、私の何かが夜ごと祖母の墓へ通っている。——お盆でもないのに、何をしに行っているのかは分からない。ただ最近、朝起きるとふくらはぎが張っていて、靴の裏に、うちの近所にはない赤土がついている。