三分怪談

3分で読めるホラー掌編

第五十二話

自撮り

スマホの写真フォルダを整理していたときだ。

撮った覚えのない写真が一枚あった。私の寝顔だった。布団の中で目を閉じて眠っている私。至近距離から写したもの。日付は昨夜の午前三時。

一人暮らしだ。撮る人などいない。寝ぼけて自分で撮ったのだろうか。だが、この角度はおかしい。私の顔を真上から覗き込むようにして撮っている。腕を伸ばして自撮りしたのとは違う。誰かが私の顔のすぐ上に屈み込んで撮ったような。

気味が悪くて、私はその写真を削除した。

翌朝、また増えていた。同じ私の寝顔。だが昨日より少しカメラが近い。私の顔に。そして、その次の朝も。また一枚。さらに近く。

毎晩、午前三時。私の寝顔は撮られ続けた。日ごとにレンズは私の顔に近づいていった。最初は顔全体。次は目元だけ。次は閉じた瞼の睫毛が一本ずつ数えられるほど。何かが毎晩、眠る私の顔に少しずつ顔を近づけている。

私は寝る前にスマホの電源を切ることにした。だが、それでも朝には写真が増えていた。電源を切ったはずのスマホのフォルダに。

そして今朝の一枚。それはもう私の顔ではなかった。真っ暗な画面にぼんやりと二つの光る点。人の目だ。私の閉じた瞼のほんの数センチ上から、こちらを——いや私を、見下ろしている二つの目。眠る私の顔と、その顔が触れ合う寸前の距離で。

私は今夜、眠るのが怖い。だが眠らなければならない。──そして思う。あの写真を撮っているものは、毎晩私の顔に顔を近づけて何をしようとしているのか。明日の朝の一枚はどうなっているのか。もし、レンズの向こうの目と私の閉じた目が、とうとう重なったとき。次に目を開けるのは、ベッドに横たわる私なのか。それとも、私を見下ろしていたほうなのか。