寝顔
スマホの容量がいっぱいになったので、写真を整理していた。
日曜の昼下がり、いらない写真を消しながら、何気なくスクロールしていく。旅行、ごはん、猫といった写真のなかに、一枚だけ見覚えのない写真が紛れていた。
暗い部屋で撮られた、自撮りだった。フラッシュを焚いたらしく、顔のあたりだけが白く浮かんでいる。写っているのは、私だ。でも、目を閉じ、口も半分開いている。どう見ても、眠っている顔だった。撮影日時を見て、ぞっとした。三日前の、午前四時十二分、私がぐっすり眠っていたはずの時間だった。
寝ぼけて、自分で撮ったのだろうか。でも、こんな角度はおかしい。顔を、真上から覗き込むようにして撮っていて、腕を伸ばして自撮りしたのとは違う。誰かが、眠る私の顔のすぐ上に屈み込んで、シャッターを押したようだった。
そして、気づいてしまった。私の眠る顔の後ろ、枕の向こう側に、もう一つ顔があった。
暗くて、輪郭しか見えない。でも、それはこちらを——つまり、カメラのレンズをまっすぐ見ていた。私の肩越しに顔をぴたりと寄せ、にっと口角を上げて、まるで二人で仲良く撮ったツーショットのようだった。眠る私と、笑う誰か。
私は、震える指でその写真を削除し、ゴミ箱からも完全に消した。見なかったことにしたかった。
でも、その夜から分かってしまった。あの写真の部屋の構図も、枕の位置も、壁のしみも、すべて私の寝室のものだった。あれは、他人の部屋ではなく、私が毎晩眠っている、あの部屋で撮られたものだった。
それ以来、私は、カメラを封じるために、寝る前にスマホの電源を切るようにした。──でも、今朝充電しようと電源を入れたら、また一枚増えていた。昨夜の、午前四時十二分、同じ時刻に眠る私が写っていた。そして、後ろの顔は前よりずっと近づいていて、頬と頬が触れそうなほどだった。次の一枚では、私と、あれの顔が、きっと重なる。そうなったとき、朝目を覚ますのはどちらなのだろう。